平成6年　卓越技能者受賞(左官)
有限会社　長谷川左官工業　社長

長谷川哲義（はせがわてつよし）さん

昭和17年哲義少年は左官屋の4代目として生まれる。
親の背中を見て、当然進むべき道は左官屋と決めた。誰に強要されたわけでも、家業のプレッシャーからでもない。親父が操る鏝(こて)から真っ白な壁が出来上がっていく様を見ているのが好きだったという。いつか自分も親父のようになれたら・・・と憧れた。
高校卒業後、憧れは厳しい現実となる。親元を離れ住み込み修行が始まる。

修行ですよ。(笑)　苦労が当たり前じゃないですか。（笑）　全て自分の為になるんです。苦労を苦労だなんて思ったことは一度もありません。

自分では努力してるなんて思ってませんね。頑張ってるとも思わなかった。他人から見たら、大変だなぁ、無理してるなぁって思われてたかもしれませんけど。でも、やってきた事は全て当たり前。ただ、それだけのことです。

職人にはいろんなイメージがあるでしょ。頑固だとか気難しいとか。偏屈なんてことも言われる。みんな悪いイメージばっかり。（笑）　昔の職人さんは言い訳が多かったから、そんな風に言われたんだと思いますね。例えば、雨が降ったから乾きが悪いとか、寒かったから仕上がりが良くないとか。そんなことは天気予報見ればいくらでも予測が出来る事。対応しなかった自分責任は問わないんだね。
或るいは、○○さんより経験が少ないから出来なくて当たり前。上には上がいるからと負け惜しみを言う。昔の話を引っ張り出して自慢を始める人もいる。現在に話題があれば、昔の話なんて出てこないはず。
ね？とにかく、そうやって言い訳をしてきた。だから職人って言うと親しみを持ってもらえないんだと思います。

自分も親方から言われたことですが【売れる仕事をしろ】ということ。これが全てでしょうね。

後を継げなんて一度も言ったことはありませんよ。

いやいや・・・
これからの左官屋には化学が必須です。環境や素材の勉強もしなくてはなりません。まだまだ若い職人達と一緒に現場で切磋琢磨したいですね。技術を盗む時代ではなく共有する時代になって行かなくては。

聞き方が違うけど、一番良くある質問だ。（笑）　趣味だろう？（笑）　仕事！！

現場に着いたら帰る支度をしろ】とは長谷川の教え。　　　　　　　　　　　　　　

職人としての確かな技。人としての深みのある眼。

職人とは長谷川哲義の代名詞だったと気づかされた。